スコーンと紅茶とエヌビディア



毎朝5時20分に起きる。
炊飯器のタイマーが鳴るのは5時30分。
ご飯が炊き上がるまでの10分間、この時間に何を考えたかでその日の具合が決まる気がしている。


以前はすぐにスマホを見ていた。
日本とドバイの時差は5時間。
私が起きるころ、日本の皆さんは午前の絶好調の時間帯。
何をした、どこに行った、これを買った、いくら儲けた、うまくいくにはこうしろあーしろ、うん、世界は今日も変わりない。みんな元気だ。


最近は寝起きにスマホを見るのをやめた。
(嘘、今朝は見た。チャットワークとメッセンジャー)

誰かが何をした何を食べたの報告は、見ていて楽しい。

うちの認定講師総代エステルは、しょっちゅうアフタヌーンティーをしている。
アフタヌーンティーをしない私からすると、その景色に感心する。
職人の仕事だなぁなんて、インスタをぼんやり見つめる。


いくら儲けたの話も、人を見極めて見ると経験値が上がる。

好きな投資家がいる。

去年は完全に彼のいうことを鵜呑みにして株式投資をしたところ、ばっちり結果が出た。
通常私は10%くらいで回しているが彼の言う通りに買ったところ、240%の成績で売り抜けられた。愉快な体験だった。





私は小学生のときに母を亡くした。
朝起きたらもう死んでいた。

朝はずっと苦手だった。
起きた瞬間から絶望感に襲われ、起きた瞬間に罪悪感に押しつぶされそうになる。
小学生から37歳までずっと、毎朝それを体験し続けてきた。
朝が苦手な理由に気づいたのは37歳のときだった。
それまで私は自分のことを、一種の精神病なのだろうと思っていた。
でもそうでははかった。
ただ、そういう体験を見つめ続けていただけだった。

母は亡くなった。
だから、今、母の死は私を苦しめない。
体験は30年以上前に終わっていた。
それはとっくに目の前にないことだった。



何を見るかは自分で選べばいい。
エステルを見るのは彼女の存在に癒しを感じるからで、投資家を見るのも彼の発言に触れるたびにふぅと気が抜けるからだ。

アフタヌーンティも投資も私にとっては同じこと。
どちらも私のど真ん中にない。
他人の話は私の話ではない。
だからこそ、他人の話は聞いていて体が緊張しない話だけにしている。
体を緊張させるような他人の話は、自分の話の害になる。
30年も不愉快な朝を迎えるのはもう御免なのだ。

アフタヌーンティや投資の話が私のスマホに表示されるのは、私がそれを見るからで、エロ広告ばかりが流れてくる人もいれば、住宅情報ばかり流れてくる人だっている。
人はつくづく見たいものを見て生きている。
あなたは何を見ているだろう。



私が朝の10分に何をしているのかというと、スイスやニュージーランドの動画を見ている。
今これを書いているときも、山の音を聞いている。
鳥がさえずり、川の水が流れる環境音。
来年には動画ではなくて、その環境の中にいることを期待している。
今よりそんな時間が長くなって欲しい。


ドバイは、日本を含め、これまで旅した場所の中で一番治安がいい。
人は優しく、差別もなく、笑顔の多い場所だと感じている。
住み始めた当初は物価の高さに顔が引きつったけれど、ヨーロッパに比べたらずいぶん安い。日本とヨーロッパの中間だと思えば、悪くもない。
暑すぎることもエンタメが少ないことも食事がうーんなところも、住んでしまえば慣れる。
いい国だと思う。

ただ、そんなことはわかって引っ越したけれど、緑が少ないことに限界を感じ始めているのも本当だ。
こんなに花と植物がない暮らしは人生で初めてで、芦屋が恋しくなるときはいつだって植物不足を体が感じているときだ。
芦屋でなくとも、大都会東京ですら緑がゆたかで目に優しい。
日本に住んでいたころは、田舎に行かないと緑はないと思っていたけれど、まったくそんなことはなかった。
東京にいても、深呼吸はできる。





自分の人生のど真ん中を生きるには、自分以外をどうにかしたら簡単だと思っている。

「自分が変わらなきゃ世界は変わらない」
でも変えられるものは変えてしまえばいい。

どの国に住むか、どんな家に暮らすか、誰と暮らすか、どんな花を飾るか、何を食べるか、誰の話を聞くか、どれも簡単に変えらえる。

国や家は変えるのが難しいと思うかもしれないけれど、ときに人生には、もっと変えるのが難しいことが起きる。
それを思えば、国や家もたいしたことではない。
ビザを取ればいいだけ、不動産屋に行けばいいだけ。

人生には、何をしたら答えに辿りつくのかわからないことが起きる。
だからそれ以外の、やり方のわかることは、どれも好きなように変えてしまえばいい。


来月はいよいよケニアに行く。
ケニアのサバンナに住みたい!
中学2年生のとき、本気でそう思っていた。
中東より自然は多いのだろうか。
ケニアは年中暑いと思っていたら、どうやら来月は気温も10度台まで下がるようで、すでに思い込みが崩壊している。
シンバとはケニアの言葉でライオンだと知った。

ドバイのことも年中暑いと思っている人がいるけれど、この国は11月から3月は日本の秋の気候で最高だ。
砂漠だからって乾燥していると思いがちだけれど、湿度は日本より高い。
水道水は飲まないけれど、飲むこともできるらしい。ちなみに、軟水である。



思い通りにならないと感じる人生を思い通りに生きるには、変えられるものを変えるといい。
それは、子育てに悩んでいるのなら、子育ての悩みを解決するノウハウを聞くより、ダイニングテーブルを片付けて美味しい紅茶を飲むということ。
売上が伸びなくて悩んでいるのなら、売るのを一旦やめてみること。
綺麗な格好をして美術館に行くといい。


自分の人生にあったらいいなと思うもので身の回りを彩っていく。

ハウツーもたまにはいいけれど、それに夢中になるということは、あなたの人生が問題解決のための人生になるということ。
悩みがあるのなら、到底悩みを解決してくれなさそうなアフタヌーンティや投資の話を聞いて、好きな場所に住んで花を飾ればいい。

それじゃ何も解決しないと思うあなたは、1行目に戻ってもう一度この話を読もう。







毎朝子どもを送り出したらすぐにジムに行くのだけれど、今朝はすぐに文章を書いてみた。
おーおーいい感じ。頭が回る。指が動く。
当たり前だけれど、ジムに行くと疲れるんだよね!笑
しばらくルーティーンを変えてみようと思います。

それではまた。


須王フローラ