人口38万人
うちの街は世界的企業があるおかげで潤っている。
人口も多いし、車も多い。少子高齢化らしいけれど、ここで生きているとちっともそんな気がしない。
まっすぐ遠くまで見渡せる道路。
高速道路と一般道の中間みたいな、ETCはついていないけれど有料で、有料なのに速度制限60Km。
便利なのか不便なのかわからない道路に疑問を持たず、そこにあるからと車を走らせる私たち。
ようするに、田舎。
東京で育った私にそんな田舎は耐えられないよってみんな言ったけれど、案外なんとかなっている。
コンビニまでは歩けない。
おしゃれな習い事はない。
親子教室でママ友はできなかった。
でも、一人の時間も悪くないと思っている。
乾燥した部屋の空気に、少しずつ湿り気を感じるようになってきた。
外を歩く人たちの服装にも、明るい色が増えてきた。
まだ桜は咲いていないけれど、黄色い花が咲いているのが見える。
鏡を見ると、いっぱいのニキビと乾燥した唇。
ホルモンってすごい。
産んだら綺麗になるってお姉さんは言っていたけれど、本当に治るのかな。
治らなかったら美容皮膚科に行きたい。
でも検索しても出てくるのは泌尿器科と美容皮膚科が併設されたクリニックだけ。
なんで泌尿器?
こういうところが田舎の謎。
予定日まで、あと10日。
名前は決まっている。
退院するときに着せるセレモニードレスは彼が買ってきた。
保育園のリストを眺めながら、ドレスのタグを切る。
ポリエステル100%
ハサミを膝に置いて、ドレスを高く持ち上げる。
うん、案外悪くない。