美しい理由


朝、5時20分。
アラームの音で目覚める。
早起きができる体で良かった。


キッチンに移動して白湯を沸かす。
我が家はオール電化なので、カセットコンロを使う。
白湯だけはどうしても火がいい。

小さな火でゆっくりお湯を沸かす。
強い火で沸かしたお湯は刺激が強い。
朝起きて最初に飲む白湯だけでも、ゆっくり作る。
飲んだときに体をびっくりさせないように。
忙しい朝にのんびり火を見つめている時間はないけれど、お味噌汁の大根を切ったり、お弁当の卵焼きを焼きながら、なんとなく横目でその存在を確認する。

毎日何本もお香を焚く。
その理由の一つも、火を使うから。
火は場を浄化し、煙は悲しみを癒す。
自宅は常に清浄な空間にしていたい。
家族の生活と自分の仕事が生まれる場所は、意識的に美しくする。


テーブルには花がある。
今はトルコキキョウ。
花もまた、そこにあるだけで空気が変わる。花が場を作る。

心地よい音。
包丁の音、冷蔵庫を閉めるときの音、食器のぶつかる音、空気清浄機の音。
小さい音も大切に。


子どもが起きてくる。
朝ごはんを食べさせる。
その姿に目尻が下がる。

安心の中に暮らし、あたたかい食事を当たり前の顔をして食べている。
これが見たくて毎日食事を作り、家事をする。
子どもにとっては、わたしと暮らすこの場所が実家。
生涯思い出す場所。
わたし一人ならこんな贅沢な暮らしをしなくてもいいのだけれど、彼女の記憶を美しくしたくてここに住んでいる。
子ども時代の記憶は、一生を支えてくれるから。



見たいものを見るのはとても大切なこと。
あなたの体を作るのは食べものだけじゃない。

見るもの、聴くもの
取り入れたものがあなたの全部になっていく。
一部じゃないのよ、全部。


人は見たものの方に進んでいく。
だから、目の前には美しいものを置く。
美しいものを見ていたら美しい人生になるし、怖いものを見ていたら怖い人生になる。
刺激の強い怖いものを見てばかりいるのに、安心できる美しいものが欲しいなんてそれは無理なのよ。


今日も美しいものを見ましょう。
美しい音楽を聴きましょう。

ごきげんよう。


須王フローラ