毛布を巻き直して待つ



いつぶりかに花神を読んでいる。
読んでいるというか、朗読を収録している。
動画として販売するために朗読しているのだけれど、これがもうほんと、え?え?わたしってば、こんな文章書いていたの?と自分にびっくりなのだ。


内容ではない。内容に偽りはない。
わたしの話す内容はいつだって自分の体験に基づいていて、誰かから聞いた話やどこかに書いてあったことをそのまま人に伝えることはしない。それはわたしの言葉になっていないものだから。


本題はそこではない。
わたしの文章の稚拙さだ。
正直驚いた。こんなに下手くそだった?たった2年前だよ?




今年に入って花金を出したとき、ライターの友人から、この2年で何があったの?すっごく上手くなっていると言われて、そうかな?全然わかんないけどと言っていたのが馬鹿みたいに思える。
わたし、めっちゃ上手くなってる!




花神を書いたとき、たくさんの人が、それはもうたくさんの人がわたしの文章を褒めてくれた。わたしは調子に乗っていたな。お恥ずかしい。


でも、内容はやっぱり良い。
2冊目ももちろんいいのだけれど、1冊目の方が内容は好きかもしれない。
そしてきっと、3冊目はもっと好きだと思う。まだ構成も決まっていないけれど。書きたいことが薄ぼんやりと見えてきた。







砂漠の夜は寒い。
アラブといえど、夜はダウンが必要なくらいに寒いのだ。
見渡す限りの砂。地平線まで波打つ茶色と、黒とネイビーが混ざったような空。空に浮かぶ真っ白な月は、昼間見る太陽より目に明るい。
風が吹けば砂が刺す。私は毛布をくっと巻き直して、顔を下に向けながらそのときを待った。




そんな気分で、物語が始まるのを待っている。




2024年8月14日  東京のレジデンスにて


須王フローラ