理解と納得は違う
今日はGrandir会メンバーの精神科医さわさんと対談をしました。
さわさんが本を出版した記念のクラウドファンディングでしたので、非公開の内容になります。
ただ、そこで話した「理解と納得は違う」ということについて、あなたにも少しお伝えしようと思います。
どのような文脈でこの言葉を使ったのかというと、毒親(とあえて言います)との関係についてです。
幼少期のつらい体験。
自分の親は毒親だったのではないかと悩む方に聞いていただきたい話です。
ただ先に言っておくと、毒親問題で悩んでいる人とそうでない人の割合は、後者の方が圧倒的に多いことは知っておいてください。
自分がそれに悩んでいると、この世のほとんどの人も同じであるかのように錯覚しますが、それはまったくの誤解です。
家族仲がよく、平和な家庭に暮らしている人がほとんどです。ですから、もしあなたが毒親に育てられたと思っているのなら、それは特殊な体験であったことを自覚しましょう。あなたは、大変な体験をしたのです。
では本題に入ります。
あなたは、毒親問題のゴールはどこだと思いますか。
親のことを理解し、最後には親と仲良くなる。これですっかり問題解決、大団円。これを解決だと思っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、これは誤りです。
問題(だとあなたが思っていること)を解決すること、つまり問題そのものを消してしまうこと、これを毒親問題のゴールだと思っていると、またあなたは苦しみに捕まります。
違います。毒親問題のゴールは、あなたの人生と親の人生を切り離して考えられるようになることです。親と一緒に食事をしたり、笑顔で会話ができるようになることではありません。
あなたにも子どもがいる場合、子育ての苦労がわかりますよね。
毎日休みなく、産んだその瞬間から寝ずの育児が始まります。どんなに疲れていても投げ出すことはできず、生まれてきた命を生かすことに必死です。
その経験をしたあなたは、きっとこう思うはずです。
子育てとはなんて大変なことなんだろう。私の親もこんな経験をしたんだな。大変だっただろうな。
これは「理解」です。
誰がどんな状況にあったかを慮ること、これが「理解する」という行為です。
しかし、理解と納得は違います。
「大変だっただろうな」と思うことと、「だからってあんなことを私にしたのは許さない」と思うことは両立するということです。
あなたの人生を滅茶苦茶にした人間を許す必要はないし、生きている間、二度と顔を会わさなくてもいいのです。
肉体的、精神的虐待を受けたあなたにお伝えしたいのは、あなたの親は馬鹿だったということです。あなたの親は、悪人です。間違った行為をしました。身内だからというたったそれだけの理由で逮捕されていませんが、これが他人だったら犯罪でした。損害賠償を請求できる事案でした。
あなたの親は、あなたが自分の子どもだからという理由で、安心してあなたを傷つけました。罪に問われないことを知っているのです。もしあなたが隣に住む隣人なら、あんなことはしなかったはずです。
毒親をいつまでも憎むのはあなたがすり減ってしまいますから、それは得策だと思いません。親に対する怒りの感情があるのなら、それは専門家の手を借りて自身を癒す必要があるでしょう。
今話しているのは、その後の話です。
あなたの傷が癒えたと実感できたとき、今度はあなたに選択権があります。
それまでは親から一方的に与えられるばかりでした。親からの愛も不安も、あなたに受け取らないという拒否権はなかった。でも、今度は選択権はあなたにあります。受け取らないことを選んでもいいのです。
あなたの人生はあなたのものです。他の誰のものでもありません。
あなたという、この世にたった一人しかいない大切で貴重な価値ある存在を、あなたはどうしたいと思っているのでしょう。
親と仲良くしても構いません。
でも、親を捨ててもいいのです。
親に死んで欲しいと思っても普通です。
許せないものは許さなくていい。
そうした気持ちと幸せは共存できます。
あなたは、そうした普通の人が体験しない黒い気持ちを持ったまま、そのままのあなたで幸せになってもいいのです。白いものしか美しくない。そんな世界にわたしたちは生きていません。
家族は仲が良いのがいいですね。
一緒に過ごす時間は楽しいのがいいですね。
親の前で安心してくつろげるのがいいですね。
顔色を伺わず、安心して暮らせるといいですね。
相手の存在を、自分の存在と同じだけ大切にできる関係性がいいですね。
でも、ときにそれが難しい相手が必ず現れます。
あなたの場合、それが親だった。
残念でしたね。
あなたはよくやったと思います。一生懸命、仲良くなろうと頑張りました。それでも、何年も何十年も拒否され続けた。悲しかったと思います。
それでも、あなたの人生は続きます。その人生をどう生きたいですか。
あなたには、幸せが似合うとわたしは思いますよ。
2024年5月24日 ドバイの自宅にて
須王フローラ