【連載】帰っておいで(4)
ソファに座る愛さん。
体を触りたいので1人がけの席に移動してもらいます。
愛さんの両肩に手を置きます。
全身をスキャンするように同調の度合いを高めていきます。
同調すると、愛さんが感じる感覚を私も感じることができるのです。
次に肩と頭の上に手を置いて視ていきます。
愛さんは表情で感情が表現できなくなっています。
でも、表情で表すことができないだけで実際は違うのです。
愛さんの奥深くにちゃんといる。
元気で、笑顔で、自分は絶対に大丈夫なんだと信じている強い愛さんがいるのです。
日常生活が送れなくなっても、学校に行けなくなっても、お友達と遊びに行くことができなくなっても、愛さんはしっかり愛さんの中にいました。
聞こえてくる恐ろしい声、操られる体。
自分の子どもであってもおかしくない年齢の女の子が毎日こんな恐怖と戦っているかと思うと、私は思わず愛さんを抱きしめていました。
「本当に良く頑張ってる」
愛さんは「ありがとうございます」と言いました。
愛さんの中にいる愛さんは少し照れたように笑っていました。
1つずつ愛さんに確認していきます。
毎日体の内側が震えていますか。
はい。
私と会った時も震えていましたか。
はい。
でも食事が終わる頃には止まっていましたよね。
はい。
いつも上半身だけ辛いですね。
はい。
左側だけ。
いえ、右です。
あれ?そうですか。
(後から考えたら食事していた時は向かい合っていたので左右反転してました)
自分が落ちてく瞬間が分かりますね。
分かります。
ではこれからは落ちそうになったら私を呼んでください。
大きな声で呼んでください。私が必ず引っ張り上げます。
はい。
そのうち自分で踏ん張れるようになりますから、それまではコレを身につけていてくださいね。
(と、ちょっとしたおまじないを掛けたものを渡しました)
はい。
と、その時です。
愛さんの中で灰色のソレが小さく動いたのを私は見逃しませんでした。
すでに色は薄く、形が崩れています。
人と動物の姿をしていたはずでしたが、いつの間にかその影もありません。
熱田神宮すっご・・・。
部屋に入った瞬間から空間を熱田神宮にしていたのです。
こころの小径で私が感じた振動、熱田神宮に行く前日から感じていたあの空気で部屋全体を覆っていました。
そのご神気にやられて愛さんの中にいたモノは弱っていったのです。
そうなればここからは簡単。
すぐに大きく背中を叩き、口から出していきます。
何度かそれを繰り返すと、フッと愛犬の気配が消えました。
常に気配を感じていた訳ではないのですが、そこにあった気配が消えたことで分かりました。
あぁ、持っていった。
愛犬がソレを連れていったのです。
何が起きているのかを説明した後、もう一度愛さんを霊視しました。
網目・・・
何重にも重なった網の奥にまだ何かある。
私は順番に網を剥がしていこうとしますがなんせ枚数が多すぎる。そして硬い。
外側から奥にあるものを壊して網目の隙間から取り出すことにしました。
ボロボロと崩れた黒い何かを観察します。
あ、これ、巣だ。
ここにずっとアレが住んでたんだ。
まさに巣喰うです。
体の中奥深く、何重もの網で硬く固定された巣が愛さんの体の中にはありました。
でもこれ・・・網目から落ちてこない・・・。
なんで・・・?
このままにしておくと、後で元に戻ってしまう気がしました。
そしてまたアレが戻ってきてしまう。
んーーーーーーーー・・・・・・・
あ、そっか、ご神器。これ刺しとこう。
ちょっとごめんなさいね、いきますよーーーーー(ドンッ
私は、背中にご神器を刺して巣が元に戻らないようにすることにしました。
(まさかこんな使い方をするなんて
続く